居間の畳の上に畳みたいなござを敷いてあって、みんな床でごろごろする、そんな家だった。
夕方7時半か8時頃に脚を折り畳み出来る低いテーブルを2つ出してみんなで座る。
あぐらは行儀が悪いから正座しろと言われる。
そこで夕飯。
ご飯とお味噌汁とおかず一品か二品。
みんなテレビの方を向いてる。
父は饒舌な人だったから、ニュースについてあれこれ文句言ったり冗談言ったりしてた。
両親は必ず晩酌。
ビールか、焼酎か、日本酒か、とりあえず何でもいいらしい。
父は食事の最後にご飯とお味噌汁を食べてたな。

たまたまその日の朝に、よくパンを売りに来る人が来ていて、エッグトーストみたいな惣菜パンがあった。
父は「あー、じゃあそれ食べようかな。」って言って食べたんだけど、大きすぎたみたい。
でも残さず最後まで食べた。
食べ終わったとき、
「食べすぎた!」
って言ってたばたっと仰向けに倒れて寝転んだ。
顔は笑顔だった。
母は「なにやってんの。」
ってこれまた笑ってた。

なぜかいまそれを突然思い出したら泣けてきた。
あれが幸せだったとは、最中にいては気付けなかった。
幸せな子ども時代だったんだ。

そんなに仲がいい訳でもない、かといって悪い訳でもない両親夫婦。
私たち兄弟三人。
祖父母。
けして裕福ではないけど、少なくともご飯が食べれない日はなかった。
本当に普通のありふれた家族。

今はこんなになっちゃって、ごめんという気持ちでいっぱいだ。
私はこんなに父のことが好きなんだ。
信じられない。

私は自分が悪いって知ってるんだ。
自分が不誠実だって。
こんな仕事ぶりで。
それを人のせいにばかりして。

今頃実家で両親はどうしてるかな。
立派な姿を見せたかったのに。